資料
日本ウイルス学会 理事長 永井 美之 殿
平成17年2月17日 日本ウイルス学会将来構想検討委員会 委員長 永田 恭介
日本ウイルス学会の将来にむけての提言
日本ウイルス学会(以下、本学会)の理事長の諮問委員会である日本ウイルス学会将来構想検討委員会は、本邦のウイルス学およびウイルス研究の発展に本学会の果たす役割は重要であり、学問的にも社会的にも指導的でなければならないとの認識に基づき、本学会の果たすべき役割を確認し、その重責を果たすために、現状分析と極近未来の本学会のあり方と進むべき方向の検討を行なった。ここに、委員会でとりまとめた具体的な実行案を提言する。
提言1:本学会のホームページの充実と資料/データなどの集積 本邦におけるウイルス学とウイルス研究の発展のため、加えてそれらに従事する学会員の利便のため、および非学会員の公益のために、ホームページ(以下、HP)の充実を計る必要がある。具体的には、本学会の果たしている社会的な責務と本学会自体の活動の広報、ならびに本学会員が所有する知的/物的財産の集積(データベース化)・公表を通じての啓蒙活動を目的として、HPの充実を計る。
- 本学会員への便宜を図る目的で、各種の集会案内、就職情報、ポジション情報などを収集し、適宜HPへアップロードする。
- 標準ウイルス実験法/プロトコールなどを作成し、学会誌への掲載あるいはHPへのアップロードを行ない、ウイルス研究者が専門と異なるウイルスを使う際の抵抗感の軽減を図る。また、ウイルス学/研究関連用語の解説を目的とした辞典に類するデータベースをHP上に構築し、研究活動の円滑化を図る。さらに、学会の広報が主体となって、ウイルス関連サイトへのリンクを構築し、ウイルス学およびウイルス研究関連の情報ネットワークの集大成をめざし、より利用価値の高いものとする。
- 本学会員が保有する情報(ウイルスの形態写真、病理組織像、ウイルス株のデータベース、遺伝子クローン、抗体などについて)を集積し、一部はHPを通じて公表、分与の仲介の場を提供する。
- 本学会が主体となり、本邦におけるウイルスの取り扱いに関するバイオセーフティー指針(ガイドライン)を作成し、HP上に公開する。
- ニュース性の高いウイルス/ウイルス疾患(たとえば、最近であればSARSやトリインフルエンザウイルスなど)についての教育的な記事の作成・公開や、加えて本学会の対応などを話題性の高い時期を失せずにHP等を通じて公開する。
提言2:学会外部(メディア、政府、海外など)との対応
- メディアへの対応は、従来同様、学術集会の中での討論を中心にすすめるのが望ましい。しかし、テーマによってはパネルディスカッションの導入も集会運営の一方法として検討すべきである。
- ウイルス関連の「リスクマネージメント」の重要性をメディアおよび政府へ訴え、国の施策(たとえば、「食の安全」、「安全で安心な社会」など)を学会が支援し、また協調する姿勢を築く。(訴える手段、協調する方法論については継続審議中)
- ウイルス関連研究のよりいっそうの推進のために研究費のウイルス領域への配分増加、大型プロジェクトのウイルス領域への誘導などについて本学会が主導的な働きかけをすることが望まれる。(方法と受け皿の問題については継続審議中である。学術審議会や審査会などのメンバーに就任されている本学会所属の学会員にその役をお願いする。一方で、審議会をリードするような人材の発掘、育成、支援を行なうなどの意見がある。)
- ウイルス学関連領域に関しての社会的ニーズや研究動向などの調査を行なう。また、海外のウイルス学研究やウイルス疾患制圧に関わる機関との協力体制の充実を図る。
提言3:学術集会のあり方について 学術集会の実施プランの改善と学術集会以外の場でのウイルス学/研究関連の研究会の恒常的な開催が必要である。
- 学術集会、あるいはそれ以外の場において、学生会員のみならず正会員を対象に、基本的な講義に類するセクションを開設する。たとえば、組織学概論や病理学概論のような教育的講義、あるいは異なるウイルスを扱うためのテクニカルチップの講義を実施する。これらの方策は、領域外から参入する若手(たとえば、最近の医科学修士大学院大学の増加に伴う大学院学生の構造変化)の教育に資することもできる。
- 学術集会において、各セッションのオーバービューの時間を設定する。たとえば、その分野の基盤、問題点、および1年間の進展などについてオーバービューし、分野外の人にもセッションが理解しやすいようにする。
- 学術集会に連携して開催される市民公開講座の意味を再考する必要がある。市民公開講座は、必ずしも、期日や場所を学術集会と重ねて考える必要はない。むしろ、アクセスが良く、聴衆の集まりやすい場所と日時を設定することのほうが重要である。
- 学術集会において、展示ブースの増設、冠ワークショップの開設などを行なう。このことにより、集会運営の経済的な問題を解決するとともに、最新の便利な手技手法を学べる可能性の場を提供し、バイオ関連企業との連携を深めることを目的とする。
提言4:人材開発と人材育成 明日のウイルス学/研究を築くのは、人材であるとの認識に基づき、若年層からの人材のリクルートと予備軍の育成を行なう必要がある。また、本学会として社会への積極的な働きかけ(知識のフィードバック)を行なう。
- 若手研究者の研究に対するモチベーションを本学会としての引き上げることが必要である。たとえば、若手研究者の学術集会、あるいはそれ以外の場での口頭発表の機会を増やし、またあるいは、学術集会とは別に若手研究者の参加を中心において開催される特別なワークショップの開催などを学会として支援する。
- 将来のウイルス学研究をめざす人材育成のため、高校、中学、あるいは小学校に出前授業を行なうことを学会として支援する。
- 大学生や修士大学院生を対象とした「分かりやすい、面白い、ウイルス学レクチャーシリーズ」を学術集会以外の場で開催することを学会として支援し、学会HPにも記事を掲載する。
- 社会人や医療支援者、あるいはバイオ関連企業を対象に、「ウイルス講座」を学術集会以外の場で開催することを学会として支援し、学会HPにも公開する。
- 国際学会への参加を支援する奨励システム(これまでの杉浦基金と同様な制度)や「学会奨学生」や「学会フェロー」のような、学会支援型の大学院生・博士研究員制度の創成を目指す。
提言5:各種専門委員会の設置について 以上の提言1-4を実行するにあたり、本学会内に下記の常設の専門委員会(一部は、現行の委員会およびワーキンググループを改組する)を設置することを提言する。
- 広報専門委員会・・提言1の実施と広報システムの運営・管理
- 研究調査専門委員会・・提言1のデータ収集と管理、および提言2のウイルス学関連領域における社会的ニーズや研究動向の調査など
- 海外協力支援専門委員会・・提言2の中の海外協力の実施にむけた体制作りと海外協力の本学会の窓口として機能
- 学術集会専門委員会・・提言3の実施
- 研究・教育支援専門委員会・・提言4の実施
|