問2.浸透圧の高い場合と低い場合に分け、OmpR
蛋白が OmpF 遺伝子に ompC
遺伝子の発現をどのようなメカニズムで調節しているか述べよ。何故、EnvZ
遺伝子、OmpR 遺伝子のいずれの欠損によっても、OmpFが常に発現しOmpCは、発現しなくなるのか、も同時に説明せよ。
問3.点変異 OmpR* の導入により、ompC は常に発現し
ompF は全く発現しなくなる。OmpR*
の変異の性質を推定し、説明せよ。
問5.EnvZ、OmpR、OmpF、OmpC、いずれの遺伝子も正常な大腸菌に
OmpR*
を十分発現するプラスミドを導入するとどのような表現型になるか、推定せよ。
遺伝子組み替え技術によりトランスポゾン Tn10
にラクトースオペロンが Insertion Sequene (IS)
の下流に来るように挿入した。即ち、次の様な構造のトランスポゾンを作った。
IS−lacZ−lacY-lacA-------tet−IS
この様にして出来たラクトースオペロンには翻訳開始シグナルはあるが、ラクトースオペロン自体のプロモーターオペレーターは持っていない。この様にして出来たトランスポゾンのトランスポジション活性は完全に保たれている。
このトランスポゾン Tn10−lac
をラクトースオペロンを欠損する大腸菌に導入すると、染色体の色々な処に挿入される。多くの場合はベータガラクトシダーゼの発現は見られない。しかし、ベータガラクトシダーゼを発現する菌も偶に見つかる。この中には、紫外線など
DNA
損傷を起こすような条件に曝した時にしかベータガラクトシダーゼを発現しない菌もある。挿入の結果DNA損傷を修復出来なくなったような菌も見つかる。
問1.トランスポゾンとは何か。
問2.このトランスポゾンを大腸菌に導入し染色体に挿入させた時、大部分の菌はベータガラクトシダーゼを発現しないのに、偶に発現する菌があるのは何故か。
問3.偶に見つかるベータガラクトシダーゼを発現する菌にラクトースを与えるとベータガラクトシダーゼの発現は変化するか、変化しないか。その理由を述べよ。
問4.紫外線でベータガラクトシダーゼの転写が誘導される菌においては、このトランスポゾンはどのような部位に挿入されていると考えられるか。
問5.紫外線でベータガラクトシダーゼが誘導される菌から、紫外線照射しなくても常にベータガラクトシダーゼを発現している変異菌を得た。このような菌では、lexA
という遺伝子座に変異のある事が分かった。このような菌は DNA
損傷により誘導される1群の酵素を高レベルに発現していた。このような菌にはラムダファージが溶原化する事は困難である。この観察から正常の大腸菌でのlexAのそもそもの機能はどういうものか推定せよ。
問6.問5でラムダファージが溶原化しにくいのは何故か。推測せよ。
問7.上の紫外線照射によりベータガラクトシダーゼが誘導されるような
Tn10-lac を導入した菌の中で、lexA
遺伝子は正常な事がはっきり分かっている菌がある。これを変異原物質で処理し、紫外線照射してもベータガラクトシダーゼを発現しない変異菌を得た。このような菌はいずれも
recA 遺伝子を発現していなかった。ここから推定される recA
遺伝子産物の機能は何か。
問8.recA
遺伝子のコードする蛋白の機能として、問7の回答以外で重要なものはなにか。
問9.挿入の結果 DNA
損傷の修復が出来なくなった菌では、トランスポゾンはどのような部位に挿入されていると考えられるか。
15才の男子が姉に連れられて外来に来た。丸1日前から陰茎の先から膿のようなものが出て下着が汚れると云う事である。尿自体は透明であり、一般尿培養試験では菌は陰性であった。しかし、尿沈査をグラム染色し顕微鏡で観察すると、グラム陰性の球菌が中に多数存在する白血球細胞が観察された。問い正すとここ6ヶ月の間に5、6人の女性と性交渉をもっていた事が分かった。この男子の説明によると、彼の相手は病気を持っている風はなかったと云う。抗生物質を処方し、続けて来院するよう説明したが、二度と病院に来なかった。この臨床例につき、次の問いに答えよ。
問1.グラム染色の結果からこの患者に病気を起こした菌は何と考えられるか。
問2.この患者は、彼の性交渉相手は病気を持っている様子はなかったと云っている。何故か。
問3.女性がこの病原体に感染すると重症になることがあると云われている。それはどのような病気か。
問4.この患者には、顕微鏡で観察された細菌の他どのような病原体の感染があり得るか。
55才の男性で、2ヶ月間発熱、寝汗、痰を伴う咳が続き、体重が11キロ減少した。麻薬や同性愛は否定しているが、複数の相手との性交渉があり、毎日一升酒を飲み、2年前には暴行傷害で刑務所に入ったこともある。診察すると頚部および腋下リンパ節の腫脹があり、体温は39度あった。レントゲン写真により気管両側のリンパ腺腫脹と肺両側に陰影が見られた。血液検査により
HIV の感染が証明され、CD4カウントが減少していた。痰には抗酸菌が検出された。
問1.抗酸菌の染色は考案した人の名前のついた方法がある。その方法は何と云うか。その染色をすると 抗酸菌は何色にどのような形に染まって見えるか。
問2.この患者に感染している細菌は何か。この菌以外にいくつかの抗酸菌がある。一つだけ名前を挙げよ。
問3.HIV感染とこの細菌の感染は関係があるか否か。関係があるとすればその理由を述べよ。
問4.この患者の治療における留意点を述べよ。
コレラ、赤痢、腸チフスにつき、お互いの違いがはっきりわかるように、それぞれの発病機構を3行以内で説明せよ。
HIV はレトロウイルスである。
問1.レトロウイルスの複製サイクルを4行以内で説明せよ。
問2.細胞に影響なくレトロウイルスの複製を抑えるには、複製サイクルのどの部分に関与する酵素を抑える薬を開発すればよいか。
問3.米国のクリントン大統領はHIVに対するワクチン開発が必要である事を認識し、この研究を推進する事を言明している。
どのようなワクチンが可能か、自由に述べよ。又、それぞれの開発上の問題点も指摘せよ。