学会誌「ウイルス」

第52巻 1号 2002年 PP.177-183


[特集2〔第49回日本ウイルス学会学術集会シンポジウム「ウイルス感染の吸着から放出まで」〕]

2.HIV―1インテグラーゼの新たな機能:
ウイルスゲノムの脱殻から組み込みまで

増 田 貴 夫

要旨:  インテグラーゼは,レトロウイルスが感染を成立する際に,逆転写酵素によりDNAに変換されたウイルスゲノムを宿主細胞の核内染色体に組み込む酵素である.インテグラーゼは,ウイルス感染成立の最終ステップを司る酵素であるから,逆転写反応の1本鎖RNAから2本鎖DNA変換というダイナミックなゲノム変換の前後あるいは感染細胞の核膜通過中において,なんらかのかたちでウイルス遺伝子との相互作用を保持する機能をもちあわせている蛋白であろうと考えた.本稿では,我々のインテグラーゼ変異体による機能解析を中心に,インテグラーゼの新たな機能として,本来の酵素活性の場であるウイルスゲノムの組み込み(インテグレーション)に加え,脱殻,逆転写,核移行等ウイルス感染初期過程の各ステップにおける機能的関与についてまとめた.


東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科免疫治療
(〒113-8519 文京区湯島1-5-45)
Functional aspects of HIV―1integrase:From uncoating to integration of viral genome.
Takao Masuda
Department of Immunotherapoutics, Medical Research Division, Tokyo Medical and Dental University
1-5-45, Yusima, Bunkyoku, Tokyo 113, Japan

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