学会誌「ウイルス」

第52巻 1号 2002年 PP.169-175


[特集2〔第49回日本ウイルス学会学術集会シンポジウム「ウイルス感染の吸着から放出まで」〕]

1.GFP発現組換えウイルスを用いた麻疹ウイルスの細胞侵入の解析
―低効率のSLAM非依存性細胞侵入の証明―

橋 元 宏 治,柳   雄 介

要旨:  野生型麻疹ウイルスの細胞侵入を定量的に解析するために,GFPを発現する組換えウイルスを作製した.このウイルスは,麻疹ウイルスレセプターであるSLAMを発現している細胞に感染すると緑色蛍光を発する合胞体を形成した.一方,SLAM陰性細胞にも低頻度の感染が起こったが合胞体は形成しなかった.感染後に緑色蛍光を発する細胞の数を定量すると,SLAM陰性細胞は,陽性細胞に比べて細胞侵入効率が1/100から1/1,000であった.SLAM陰性細胞への感染は抗CD46抗体で阻止できなかった.また,エンドサイトーシスは関与していなかった.以上の結果より,効率は非常に低いものの,SLAMやCD46以外のレセプターを用いた麻疹ウイルスの細胞侵入経路があることが示された.上皮細胞,内皮細胞,神経細胞などSLAMが発現していないとされる細胞における麻疹ウイルス感染にこのような経路が関与しているかもしれない.


九州大学大学院医学研究院ウイルス学
(〒812-8582 福岡市東区馬出3-1-1)
Measles virus entry as examined by a recombinant virus expressing green fluorescent protein
Koji Hashimoto, Yusuke Yanagi
Department of Virology, Faculty of Medicine, Kyushu University
Fukuoka 812-8582, Japan

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