学会誌「ウイルス」

第52巻 1号 2002年 PP.151-156


[特集1〔Overviewセミナー〕]

24.肝炎ウイルス(1)
―HCVに対する抗ウイルス免疫応答―

井 廻 道 夫

要旨: はじめに
 C型肝炎ウイルス(HCV)感染は約70%が慢性肝炎に移行し,約20〜30年の経過で慢性肝炎患者の30〜40%が肝硬変に移行し,肝硬変に移行すると年率約7%でほとんどすべての患者に肝癌が発生する.日本には約200万人のHCV感染者が存在し,毎年約2.5万人がHCV感染に伴う肝癌で死亡している.
 C型肝炎の臨床の最終目標は肝癌発生を予防するためのHCV感染の制御によるウイルス排除である.この目標を達成する手段として,ウイルス増殖機構の制御と特異的抗ウイルス免疫応答の利用があるが,ウイルス増殖機構の制御によるウイルス排除においても,ウイルスの再増殖の抑制には抗ウイルス免疫応答が重要な役割を果たす.従って,HCVに対する免疫応答の解析は,C型肝炎の発症機序の解明だけでなく,新しい治療戦略を開発する上でも重要である.


自治医科大学附属大宮医療センター
(〒330-8503 埼玉県さいたま市天沼町1-847)
Anti―viral immune responses against hepatitis C virus
Michio Imawari
Omiya Medical Center, Jichi Medical School
1-847 Amanuma-cho, Saitama, Saitama 330-8503

Page Copyright(C) 日本ウイルス学会 All Rights Reserved.