学会誌「ウイルス」

第52巻 1号 2002年 PP.147-150


[特集1〔Overviewセミナー〕]

23.パポーバウイルス
―ウイルスの分子進化と感染個体内変異―

余 郷 嘉 明

要旨: はじめに
 私に与えられた演題はパポーバウイルスである.しかし,ウイルス分類に関する国際委員会(ICTV)の第七回報告書によると,今までパポーバウイルス科を構成していたポリオーマウイルス属とパピローマウイルス属はそれぞれ独立して新しい科になった.本講演ではポリオーマウイルス科に絞って話をする.
 ポリオーマウイルス科に属するウイルスは皆,宿主との密接な関係がある.ヒトを宿主とするウイルスは,BKウイルスとJCウイルス(それぞれBKV,JCVと略す)が知られている.以下ではJCVを中心に述べる.先ず,JCVの発見であるが,これは三つのステップからなっている.第一のステップは,このウイルスが起こす疾患,すなわち進行性多巣性白質脳症(以下PMLと略す)の発見である.第二のステップは,電子顕微鏡によりPML患者の脳病変部からウイルス粒子が発見されたことである.第三のステップは,ヒト胎児グリア細胞を用いて脳病変部のウイルスの培養に成功したことである.


東京大学医科学研究所・感染免疫大部門・ウイルス感染分野
(〒108-8639 東京都港区白金台4-6-1)
Papovavirus:Short―and Long―Term Evolution of Human Polyomavirus JC Virus
Yoshiaki Yogo
Laboratory of Viral Infection, Department of Microbiology and Immunology, The Institute of Medical Science, The University of Tokyo.
4-6-1Shirokanedai, Minato-ku, Tokyo 108-8639, Japan

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