学会誌「ウイルス」

第51巻 2号 2001年 PP.177-183


[特集2 ウイルスと宿主レセプター]

1.マウス肝炎ウイルス(MHV)とMHVレセプターの相互作用

田口 文広

要旨: マウス肝炎ウイルス(MHV)の主要レセプターcarcinoembryonic antigen cell adhesion molecule1(CEACAM1,MHVR)は免疫グロブリンスーパーファミリーに属する細胞接着分子で,2個叉は4個の細胞外ドメインを持つ糖蛋白である.MHVRはN末端のNドメインでMHV粒子表面のスパイク(S)蛋白と結合する.MHVRにはMHVR1とMHVR2の対立遺伝子型(allele)があり,SJLマウスを除く殆ど総てのマウス系統がR1型である.R1はR2と比べMHVレセプター活性が10-100倍高く,SJLマウスのMHV抵抗性との関連が示唆されている.MHVRは,マウス肝細胞,腸管上皮細胞,グリア細胞などMHV標的細胞のみならず他の多くの細胞,組織で発現されている.MHVR以外にも2,3種類の類似蛋白がMHVレセプター活性を示す.最近,可溶性MHVRを用いた解析から,MHVはレセプター結合により活性化され,吸着細胞への侵入が開始する事が明らかにされるなど,MHVのレセプター結合後の動態についての研究が行われようとしている.


国立精神神経センター神経研究所モデル動物開発部
(〒187−8502 東京都小平市小川東町4−1−1)
Mouse hepatitis virus(MHV)receptor and its interaction with MHV spike protein
Fumihiro Taguchi
National Institute of Neuroscience, NCNP
4−1−1Ogawahigashi, Kodaira, Tokyo 187−8502

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