学会誌「ウイルス」

第51巻 2号 2001年 PP.163-170


[特集1 プリオン]

4.アミロイド蛋白凝集の生化学

柳川 弘志,小川 洋子

要旨: プリオン病,アルツハイマー病,パーキンソン病,筋萎縮性側索硬化症,ポリグルタミン病(ハンチントン病)などの種々の神経変性疾患において,これらに関連のある蛋白質が細胞内で構造転移を起こして凝集・沈着することが,神経細胞が変性を起こす原因の一つとして考えられている.プリオン病では,正常型のプリオン蛋白質が,構造転移を起こして異常型に変化し,この異常型が正常型を次々と異常型に変化させることにより,異常型プリオン蛋白質が蓄積して,感染性の凝集体をつくることが知られている.我々は,これまでに,ヒトタウ蛋白質のC−テイル8とRNaseHIのプソイドモジュール5をモデルとして,蛋白質の構造転移とそれに伴う蛋白質の凝集体の形成機構を分子論的に解明し,その機構を一般化することを試みてきた.本稿では,我々の研究結果を紹介し,アミロイド蛋白の凝集とプリオン病との関連を考えてみたい.


慶應義塾大学大学院理工学研究科生命理工学専修(〒223−8522 横浜市港北区日吉3−14−1)

Biochemistry of conformational transition and aggregation of amyloid proteins
Hiroshi Yanagawa and Yoko Ogawa
Graduate School of Science and Technology, Keio University
3−14−1Hiyoshi, Kouhoku−ku, Yokohama 223−8522,Japan

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